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教育講話記録 学歴社会について(1)

 『学歴社会』という言葉を知っていますか? あるいは聞いたことがありますか?

 ごくごく簡単な意味は、「高学歴の立場の者が、社会的に高い地位につく」ということです。現代の日本、少なくとも先進国では、この『学歴社会』によって成り立っています。しかし、これが社会に確立してから、まだ百年は経っていないのです。

 先日、NHKの番組で「そのとき歴史は動いた」といういう番組を、たまたま見ていたのですが、私が生まれた年のちょうど百年前、1864年という年が、池田屋事件の年であることを知り、ショックを受けました。池田屋事件というのは、京都の御所警護の役目についていた新撰組が、薩長の反幕府勢力が御所を焼き討ちして、天皇を奪い、そのことにより徳川政権を転覆させよう、という企てがあることを知り、新撰組が、彼らが密会をしていた池田屋を襲って、事件を未然に防いだ、というものです。この後四年で明治維新が起こったのですが、歴史学者は、この池田屋事件によって明治維新が数年遅れたと、言っている人もいます。この明治維新から、日本は近代国家への道を進むことになるのですが、その大きな柱に、身分制度の撤廃がありました。これが、『四民平等』(1872年)です。それでも、大名は華族に、武士は士族ということで、男女差別などもあり、完全に平等になるには、さらに五十年ほどかかり、第二次世界大戦の敗戦後となります。

 さて、『学歴社会』ということに、話を戻しますが、江戸時代は国を治めていたのは、武士です。その統領は将軍です。本当のトップは天皇ということになっていましたが、天皇家やその周りの公家には力を与えず、というか何もさせず、実質は江戸幕府がすべてを決めていました。だから、農民の子がいきなり出世して、社会を治めるということはできなかったわけです。確かに江戸時代の前の戦国時代には、豊臣秀吉がそうして天下人になったわけですが、それは社会の混乱期であって、もう江戸時代には、それが不可能になっていました。だから、商人や農民らがどんなに勉強して知識を得たところで、結局生まれの身分で、その枠を超えることはできませんでした。明治維新はそれを覆そうとしたわけです。有名なのは、福沢諭吉です。言ってみれば、学歴社会の始まりは彼の思想によるものが大きい。「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」という言葉で代表される、人間平等思想を説き、人は学問によって成長し、人々を指導する立場に立つことができる、としたのです。これは、ベストではありませんが、少なくともベターではあります。

 現代の社会を見ていると、ほぼ、学歴の高い人が、社会的に高いと言われる、地位についています。どうでしょうか。例えば医者という職業がありますが、これが中卒だったら、どうでしょうか。高卒くらいでも、医者になれるとしたら、どうでしょうか。診察してもらうのが怖いでしょう。そうではなくて、大学で医学部で学ぶ、一定の研修期間を得て、医師免許を得て、それで医者の卵となり、さらに研鑽を重ねて一人前の医師として働くことができることになっています。これは学歴社会のなせる技です。学校の先生だってそうです。自分は子どもが好きだからと言って、誰でも先生になれて、中には「やりたいときだけ勉強すればいいんだ」とか「カリキュラムなんて関係ない」なんていう先生が多くなってしまったら、学校教育は成り立たないし、そうした育った子ども達が大人になったときには、国はめちゃくちゃになってしまいます。

 学歴社会に対する批判もありますが、お金持ちだけが勉強していい、としたらどうでしょうか。土地をたくさん持っている人だけが学校に来ていい、としたらどうでしょうか。少し前までは、世界のいろいろな国で、白人だけが勉強していい…と、そういう時代もありました。しかし、現代では、そうした差別はありません。少なくとも先進国では、すべての人に等しく勉強をする機会を与えています。これはすごいことなのです。

 ただし、その勉強の結果、勉強したかしないか、勉強して成果を上げたか上げていないか、真面目に取り組んだか、取り組んでいないか、という点に対しては、公平な判定を下しています。それが学歴社会の意味です。努力すれば必ずできるようになる、勉強をさぼっていた人には、それなりの評価が下され、その結果社会的な地位が決まる、というのは、一見差別があるように見えますが、実はこれが公平なのです。努力すれば報わる、努力しなければ報われない、機会においては平等、成果においては公平、そうした状態になっています。

 
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学歴社会について(1)

このページの更新履歴

2019/01/04 修正
2005/10/20 リニューアル
2005/04/10 公開


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